農業省および食料安全保障のための国家主権戦略担当局長 「戦略は、農産物輸出産業の発展と共に、農業生産と国内販売の強化を目指すものとして食料主権を定義するよう提案しています」

2023年7月30日

チリカルネとの独占インタビューにおいて、農業省局長のイグナシア・フェルナンデスは、現状況における食料安全保障の重要性と国内でそれを保証するための戦略的アクションについて取り上げた。国務次官である局長は、チリにおける食料安 […]

チリカルネとの独占インタビューにおいて、農業省局長のイグナシア・フェルナンデスは、現状況における食料安全保障の重要性と国内でそれを保証するための戦略的アクションについて取り上げた。国務次官である局長は、チリにおける食料安全保障の状況を変えている進歩や目標について詳しく述べながら、いかに国家戦略が生産や栄養のある食料へのアクセスを強化し、気候変動の課題に立ち向かい、そして、生産のあらゆる段階で食品の無害性を確保するために官民連携を推進しようとしているのかについて掘り下げた。

  • 現在の状況において食料安全保障の重要性とは何ですか?また、国内でそれを保証するために行われている主なアクションは何でしょうか?

年齢や条件に関わらずあらゆる人たちが適切で十分な食料を確保できるようにすることが、あらゆる国にとって最優先の目的です。チリにおいては、Covid-19のパンデミックが、この問題を解決するのに、まだ成すべきことがかなりあるというのを明らかにしました。パンデミックの前は、2017年のCASENアンケート調査のデータによると、10.2%の人が、緩やかな食料不足の状態にありました。つまり、確実に食料を入手する力がない、および(または)、消費する食料が低品質であることを受け入れなければならなかったのです。一方、3.4%の人は、最悪の場合、1日~数日間食べずに過ごすこともあり得るという深刻な食料不足の状況に直面していました。パンデミックの最中は、収入の減った25%の家庭が、食料不足の状態にあり、“キンティル”(経済力に応じた国民の5つの分類)1と2の食料不足は、それぞれ30%と20%でした(2020年PNUD-MDSA「チリの家庭へのパンデミックの社会経済的影響」)。

この現実に取り組み、食料不足の背後にある様々な原因に立ち向かうことは、わが省が、その他省庁や公的サービスと共同で連携して取り組むべき使命です。だからこそ、去る5月に、食物摂取の権利を正式に認め、すべての人たちにその権利を確保するための一連の基本原則を明確にする目的で、食料安全保障のための国家主権戦略を発表しました。戦略は、持続可能性、ジェンダー平等、農村の若者、しかるべき仕事、企業連合などの横断的な側面におけるアクションを含め、食品の生産から消費まで農産食品のバリューチェーンの様々な段階に総合的に焦点を当てています。保護主義的な視点とは一線を画し、戦略は、農産物輸出産業の発展と共に、農業生産と国内販売の強化を目指すものとして食料主権を定義するよう提案しています。

  • 食料安全保障のための国家主権戦略の枠組みにおいて、どのように食料生産と安全保障を強化しますか?

この提案を前へ進めるために、私たちは、様々な省庁が食物摂取への権利を確保することに貢献するよう、政策やプログラムを組み合わせるアクション・プランに取り組んでいます。

様々な省庁が権限を有する食料安全保障の鍵となる分野は、栄養不良に対する闘いです。栄養不良は、一人の人の食事がほんのわずかな栄養分しか含んでいない時に起こります。それによって栄養失調に至りますが、同時に、体重オーバー、肥満、そして、益々頻度が高くなっている人々の食事に関連した非伝染性疾病も招いています。2019年には、就園前から中等教育1年(日本の中学3年に相当)までの子供や若者の23.5%が肥満でしたが、2021年には、肥満の子供や若者の割合は、2年前から7.5ポイント増え、31%に上りました(JUNAEB、2021年栄養マップ報告書)。

この点に関して、いかなる時も、人々が活動的で健康的な生活を送ることができるよう、食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を物理的、社会的及び経済的にも入手できるよう保証しなければなりません。すべての人にとって健康的な食事を摂取することを可能にする持続可能な食料システムの構築以外に、これを実現することはできません。他の省庁や地元政府と調整して実施を目指している、食品ロスや廃棄の削減を促す食品マイクロ・バンクのようなアクション・プランに含まれるイニシアチブは、これに関して推進している取り組みの例です。

農業省独自の取り組みに関しては、野菜の他、家庭の基本食料品に含まれるその他高栄養価の食品の持続可能な生産と販売をサポートするのを目的とするプログラムの設計に取り組んでいます。これにより、健康的で、無害な、“農村家族農業”によって生産される食品の供給を増やすことができます。またそれによって、チリの家庭がこうした食品にアクセスしやすくなることに役立ちます。私たちが取り組んでいるのは、国内市場向けの農産品の生産と販売の能力を高め、食品の供給を増やし、こうした製品の価格を改善していくことです。というのも、家族が、価格の高さからこうした食品を入手するのが難しく、十分に消費しないことが多くあるのです。

最初の1年間、プログラムは、野菜やトマト、じゃがいもの生産支援にフォーカスしています。これらを優先するのは、国内農業にとって戦略的に重要であるほか、健康的な食事を確保するために必要な生鮮食品の重要な部分を占めるからです。以後数年間では、国内生産と家庭の消費にとって戦略的なその他品目に拡大していきたいと考えています。

  • 食料安全保障の分野でチリが直面している最も重要な課題は何ですか?また、それにどうように取り組んでいますか?

食料生産を確保するのに直面している最も重要な課題の一つは、気候変動です。国連食糧農業機関(FAO)によれば、人々に食料を供給するには、2050年までに食料を50%増産する必要があるとしています。気候問題は、この課題実現にとって脅威となっています。

チリは、自然のシステムや地域社会に対するインパクトに極めて影響を受けやすい国だと考えられています。気候変動は、農林牧畜業の生産力や自然資源、農業生態系を変えつつあります。これは生産に影響を及ぼしますが、また、経済、社会、環境といった側面にも影響を与えます。農業は、いずれの国にとっても戦略的活動です。その社会的インパクトは、創出される労働力、稼働する生産チェーン、そして、国土の人口分布の調整効果からしても、明らかです。

すでに私たちは、いくつかの伝統的生産物に対してチリ中央部の土壌が適さなくなっていること、さらに、輸出品目の生産が国の南部へと移動していることから、いかに新たな農業気候条件が生産マップを再構成しているのかを目の当たりにしています。南部だと、果樹栽培やブドウ栽培・ワイン醸造の生産条件が改善できるからです。いくつかの調査は、野菜・果物生産の南部への移動は、すでに現在起こっていると明らかにしています。ヤギの牧畜は、最も影響を受けています。 牛の牧畜は、牧草地の条件により、南部地方では改善する可能性があります。

この複雑な状況に対処するため、様々なアクションに取り組んでいます。国家灌漑委員会を通じで、新たな灌漑法を推進しています。このイニシアチブは、小規模農業生産者が水を確保できるよう保証システムを近代化し、水の使用の効率化を果たし、遅れた地域に灌漑農業を導入、気候変動への極めて必要な対応を実現するために灌漑システムの継続的な向上を目指し、その結果として食料安全保障を目指すというものです。すべては、持続可能で公平な農村および国土発展を進めるという考え方に基づいています。このイニシアチブが、まもなく承認され、それによって水の安全保障が進むようにと期待しています。

今年はまた、現在の土地プログラムを変更し、土地資源の農業環境的持続可能性に貢献することができるだろう土地持続可能管理のためのインセンティブ・システム法(SIGESS)の法案を提出することにしています。その目的は、劣化した農業牧畜の土地の生産力を回復させ、達成した改善レベルを維持することです。この法律の規定によって、そのように定められることになります。

  • 農場から食卓まで、生産のすべての段階で食品の無害性を確保するために、どのような方策が実施されていますか?

食品の無害性は、国民が十分な量の安全で栄養のある食品を摂取することができるよう、食料主権および食料安全保障を強化するために、要となるものです。チリでは、食品リスクに関する行政は、主に、3つの組織に集中しています。保健省(同省地方局を通じて)、農業省(農業牧畜庁SAGを通じて)、経済省(国家漁業養殖庁SERNAPESCAを通じて)です。追加的に、大統領補佐委員会ACHIPIAが、こうした省庁の調整を促し、エビデンスに基づく決定をサポートする権限を持っています。

我が国は、食品の無害性や品質に関し技術的に力強い行政を有していることが特徴です。そして、それは国民と共有されています。国民が、食品のラベル、生産プロセス、検査を所管する省庁に信頼を持つ傾向にあることは明らかになっています。さらに、農業生産者は、より信頼を生み出す食料チェーンの当事者であると指摘されています。

この国家行政が食品の無害性に取り組む業界の力に重要な進展をもたらしたとしても、いくつかのシステム上の課題に取り組む必要があります。例えば、一次生産関連です。国内消費用野菜・果樹生産物への残留農薬の監視および(または)制御プログラムについてSAGと保健省とで調整・統合をすれば、資源の利用やシステム・パフォーマンスの効率を最適化しながら、これらのリスク管理を飛躍的に強化することができるでしょう。これは、化学品リスク、基本的には、国内で販売された果物や野菜への残留農薬の最大有病率に注意を払う必要性を指摘する、食品情報・警戒ネットワークRIALの最新レポートで指摘されたことに則しています。

これらの分野に取り組むため、我が国の行政を強化することは、基本的な任務です。そのため、今後数週間に、ACHIPIAの審議会を開催することにしています。ACHIPIAは、食品の無害性に関して所管するさまざまな部局によって構成されています。審議会の開催は、まさしく、この機関の行政組織化への様々なオプションを分析するためです。補佐的役割で生まれた機関ですが、恒常的に存続するよう取り組まなければなりません。

  • チリの食料安全保障の推進において、官民セクターの参加と協力には、どのようなものがありますか?

食料安全保障の推進において、官民の連携があります。食料安全保障のための主権戦略の作成においてだけでも、8つの省、地方政府・市町村を含め55の公的機関、84の民間組織、24の研究機関、3つの国際機関、43の個人と調整しながら作業をしています。アプロレチェ、オソルノ、フェデレチェ、フェデフルータ、オルティクレセは、この重要な国家イニシアチブの作成に参加した民間の関係者の例です。

こうした関係者が、食料安全保障のための主権戦略実施の立ち上げとフォローアップのために2022年6月16日、モネダ宮殿で開催された国家食料安全保障・主権委員会(CNSSA)に集まりました。

今後数か月で、アクション・プランの実施が進むにつれて、さらに地方政府や市町村の参加が増えてくることを期待しています。それらの多くはすでに、アクションを起こしていて、様々な場面で人々の食物摂取をサポートするため、政府としてそうしたアクションに加わらなければなりません。

  • 食料生産に影響を及ぼし得る危機や自然災害に対する対応力を強化するため、どのような戦略が取られていますか?

気候変動が、作物や収穫、農地や森林に影響を与える極端な事象が高い強度や頻度で起こることにより、農業に負荷をかけていることを指摘しました。こうした農業的気候事象は、繰り返し緊急事態の発生をもたらす状況においては、多くの場合その他植物衛生的事象と結びつきます。繰り返される緊急事態には、違った方法で、つまり、先手と予防の能力を高めて、また、リスク対応と緩和の戦略を支援するための方策を持つその他公的機関とより連携した活動を通じて、取り組みをしなければなりません。

この点について私たちが行った取り組みの例として、最近発生した鳥インフルエンザが家禽生産に与えた生産的・経済的インパクトに対応するため、チリウエボ、CORFO、国営銀行、農業保険と共同で行っている取り組みがあります。

これについて、早期監視・警戒ネットワークを強化し、それによって、新たな発生を減らし、制御するため、SAGと業界の間で技術会合を開催すると共に、競争力、技術支援、企業の回復をサポートするための方策により、影響を受けた企業の生産回復を支援することを目指しています。

この一連の方策の活性化は、優れた管理、公的資源の効率的利用、官民作業機関の連携力を優先させながら、鳥インフルエンザのような予期しない危機の発生に対し公的政策による解決策を策定するための政府関係部署間の連携努力を示しています。また、将来、同様の事象が起こった際に有効であり、また、永続的な優れた解決策を打ち立てるため国の力を動かすような作業方法の基盤を築くことができるようにすることも目的です。

  • チリにおいて、どのようにして食料安全保障をモニタリングし、評価するのですか?また、この分野での進展を測るために使われる主要な指標は何ですか?

チリにおける食料不足のデータを報告するために、公式情報源として、国家社会経済特性調査(CASEN)を利用しています。その調査には、地方、性別、どの市町村の出身か、また、貧困などに分けて、全国レベルでの緩やかから深刻までの食料不足者率の重要なデータが含まれています。この情報は、国の状況を把握し、同時に他の国々と比較できるようにし、そうして、持続可能な開発目標2030アジェンダをモニタリングできるようにするため、FAO(国連食糧農業機関)によって設計された「食料不足の国際尺度」(FIES)が組み込まれて以降、つい最近のCASEN2017で報告が始まったばかりであることは指摘すべき重要なことです。CASEN2022は、全国レベルでの食料不足についての次回更新情報となります。

一方、毎年、全国の就学前、基礎教育、中等1年(日本の中学3年に相当)の生徒の栄養状況について、その程度を調べ、警告することを目的として、JUNAEBの栄養マップが報告されます。そこでは、栄養失調の指標、身長の遅れ、過剰による栄養不良(体重オーバー、肥満、深刻な肥満)が報告され、そこから、地方レベルで性別、出身市町村、国籍(チリまたは外国籍)で分けられたデータを得て、チリの家庭の食料事情を間接的に推論することができます。

農業省のレベルでは、国家食料安全保障・主権委員会の下で行われた取り組みのフォローアップを行っています。まもなく、高栄養価食品の持続可能な生産と販売へのサポート・プログラムの実施に関連した一連の指標や目標を公表したいと考えています。

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